2011年3月28日月曜日

夢十五夜「俵万智  河野裕子」




「サラダ記念日」なる短歌集が出稿されてから何年になるだろう。若い高校教師が口語体で短歌を詠む。角川短歌賞を受賞し話題になった。

そもそも短歌とは..........。歌壇からは随分と批判も出たようだ。

「この味がいいねと君が言った 七月六日はサラダ記念日」
                     ........だそうだ。

河野裕子の存在を知ったのは恥ずかしながら、つい最近である。すでに昨年に癌でこの世を去っていた。ご冥福をいのる。

自分の生活、気持をストレートに三十一文字に託す河野。
教師でありながら叶わぬ恋に陥る俵。サラリと湘南を語りながら、水面はさざ波なれど海底には恋の悩みが渦巻いている。





俵万智 五選 叶わぬ恋


寄せ返す波のしぐさの優しさに
 いつ言われてもいいさようなら

伝えてはならない愛があることを
       知ってどうする24歳

それ以上近づけないけど傷つかない
  「ありがとう」とは便利なことば

さりげなく家族のことは省かれて
      語られてゆく君の一日

手紙には愛あふれたりその愛は
    消印の日のそのときの愛






河野裕子 五選  死を覚悟して 


ブラウスの中まで明るき初夏の日に
    けぶれるごときわが乳房あり

大泣きをしているところへ帰りきて
   あなたは黙って背を撫でくるる

わたししかあなたを包めぬかなしさが
  わたしを守りてくれぬ四十年かけて

たとへば君ガサッと

  落葉をすくふやうに


      私をさらって


       行ってはくれぬか  



病むまへの身体が欲しい雨あがりの
    土の匂ひしていた女のからだ








弥生 五選


君は雲 漂い流れ 消えゆかん
    我は虫けら 青空見上げ

いつかまた お逢い出来る日 楽しみに
        君の言葉は 我に酷なり

降る雪の 真白きにほい 清しさに
    君のかほりは 我まだ知らん

夏の日の 五本の指の スリッパに
     足入れパチリ 私可愛い?

いつの間に 花も萎れん シクラメン 

            眩しき薄紅 何処に消えん




0 件のコメント:

コメントを投稿