2011年3月31日木曜日


夢二十一夜「美しき花木 春」



桜前線がゆっくり北上している。関西の地では桜がその美しさを艶やかに見せているそうである。

やがて震災のみちのくの地にも美しい桜を咲かせるだろう。

北の街函館では桃、梅、桜とほとんど同時に咲くのである。一週間も違わない。

北国に住む我々はやっとその時、冬の終わりを告げられるのである。






春風の運びし匂ひ 沈丁花 




   花のかほりに 今日幸せ










醍醐寺の あまりも綺麗 しだれ桜 




    みちのくにも 間もなく届く








青空を キャンバスに描く桜木の




    その美しさいつ、北の地に










弥生 青空 白き雲









いつの日か 花を咲かさん 蕾なれ 




     そっと絡まん 白魚の指




たはむれに夢に暗じるスキ•キライ


      花占いの君のことかと





夢二十夜「俵万智」叶わぬ恋歌 ふたたび





「俵万智百選」から


潮風に君のにおいがふいに舞う 

    抱き寄せられて貝がらになる




この部屋で君と暮らしていた
    
     女の子(ひと)の

    髪の長さを知りたい夕べ




過ぎ去ってゆく者として抱かれおり
 
       弥生三月さよならの月



弥生さよなら月



恋愛のことはやめろと諭されて

     嫁入り道具の一つか歌も




ひかれあうことと

 結ばれあうことは違う2人に

         降る天気あめ




心には責任なんてとれぬゆえ

  愛せ、とり返しのつかぬほど




おしまいにするはずだった恋なのに

  しりきれとんぼにしっぽがはえる




眠りつつ髪をまさぐる指やさし

     夢の中でも私を抱くの




贈られしシャネルの石鹸泡だてて

      抱かれるための体を磨く







出席簿、紺のブレザー空に投げ

   週末はかわいい女になろう


「俵万智百選」から掲載




 
夢十八夜「弥生晦」



北国の函館にも遅い春の訪れである。春の陽は眩き輝き、風は少し冷たく水面はトロリと静かな日である。

桜のつぼみはまだ固く閉ざしている。間もなく北の街のナナカマドの街路樹は一斉に緑の葉を咲かせる。

3.11 東日本大震災の二万数千にもなる犠牲者の方々には、心からご冥福をお祈りする。被災に逢われそれぞれの地で侭ならぬ避難生活を強いられている方々にお見舞い申し上げ、一日でも一時間でも早く御地の沈静化、復興をお祈りする。




雪をはね青き芝生の顔を出し

          眩い陽二月晦



青空にまっすぐに伸びる君の笑み

     我が心にそっととけ込み



降る雪も砕ける波も北の港
   
   我れは真直ぐに風に向かわん




ふるさとにむすめ帰へりし黄昏て

      今宵一献こころ温まる




いつの間に雪に変わりし春雨の 

    木々は真白に粉砂糖のやう




朝の陽は我を照らさん清しさに
  
    春は小走り掛けよりて来る




雪中に青き芝生の のぞかせん 
    
        眩い光 二月晦




Tunamiから今日、十七日 、晴れ空に

       スターバックス 香り漂ふ








三月の真冬日の雪 南部坂 

    背中丸めん家路を急ぐ 



春の陽に包まれ 雪は溶け行かん

       君が心は 氷のやうに 




夢十七夜「NHKフォト短歌」



函館は石川啄木とは深い縁がある街である。本年は啄木歌集「一握の砂」刊行100年記念の年だそうだ。

NHK函館放送局で 〜短歌と写真でつづる 我が街 函館〜なるイベントで短歌とそれにまつわる写真の募集をしていた。

短歌歴わずか二ヶ月ではあるが早速応募である。「秋歌二十首」に詠った ....ももとせに近き母親.......を手を入れて投稿である。写真は携帯パチリだ。八月の休日、ベイエリアを車いす散策のとき一枚である。

なんと、NHK大賞受賞である。知らせの手紙を読み小躍りしてしまった。舞歌.........。



 夜に朝に
  歳老いし母介護する
     妻の戦ひ涙溢れん





母と暮らして間もなく五年になる。以前から脚の調子が悪く歩行補助用具に助けられ生活していた。ショートステイ先で転倒し、大腿骨骨頭骨折。高齢のため手術も侭ならず車いすと介護ベットの生活になってしまった。

家人は母が四十一歳の時に、難産で生んでくれた子だそうである。介護施設の勧めも聞かずに私が全部面倒みる。私しかいない。母は痴呆も進みこの二年間は壮絶なる二人の戦いである。

とある秋の夜、妻の母に対する同じ目線での戦いの傍にいて「もう良いんじゃないか。お前は充分にやったよ。思いあまっておばあちゃんを殺めるなよ」と言ったとき私の方が涙が溢れて来た。家人は一度も涙を見せない..........。




賞金まで....



嬉しさに涙こらえて

 
嬉しさを分かち合う受賞歌の

     
     微笑まんとして目頭熱く








2011年3月28日月曜日

夢十六夜「フォト短歌」二十首



フォト短歌なるものを自分勝手に始めてみた。これがなかなか面白いのである。
ふと、短歌のフレーズが浮かんだとき。写真を撮りたい光景に出合った時。携帯でパチリとやるのだ。後は簡単である。短歌と組み合わせれば良いのである。





42年振りに尋ねて来てくれたマドンナ





風音だけが冷たく






晩秋なれど銀杏木の緑は綺麗






風無くぽかぽかの秋







ベイエリアのイルミネーションは冷たく輝く







さすらいのshoji君








空の青








霙に濡れる石畳は満月に照らされ






コソ コソ コソ...........








悲しき半月





あかつき






獅子座流星群は雲間に消えて






昭和三十年一月十七日






冷たきビル旧富士銀行函館支店







はつゆき







朝日に我の不純物流されて







涙の壮行会






冷たく輝くクリスマスツリー






初雪







ナナカマドは..........







夢十五夜「俵万智  河野裕子」




「サラダ記念日」なる短歌集が出稿されてから何年になるだろう。若い高校教師が口語体で短歌を詠む。角川短歌賞を受賞し話題になった。

そもそも短歌とは..........。歌壇からは随分と批判も出たようだ。

「この味がいいねと君が言った 七月六日はサラダ記念日」
                     ........だそうだ。

河野裕子の存在を知ったのは恥ずかしながら、つい最近である。すでに昨年に癌でこの世を去っていた。ご冥福をいのる。

自分の生活、気持をストレートに三十一文字に託す河野。
教師でありながら叶わぬ恋に陥る俵。サラリと湘南を語りながら、水面はさざ波なれど海底には恋の悩みが渦巻いている。





俵万智 五選 叶わぬ恋


寄せ返す波のしぐさの優しさに
 いつ言われてもいいさようなら

伝えてはならない愛があることを
       知ってどうする24歳

それ以上近づけないけど傷つかない
  「ありがとう」とは便利なことば

さりげなく家族のことは省かれて
      語られてゆく君の一日

手紙には愛あふれたりその愛は
    消印の日のそのときの愛






河野裕子 五選  死を覚悟して 


ブラウスの中まで明るき初夏の日に
    けぶれるごときわが乳房あり

大泣きをしているところへ帰りきて
   あなたは黙って背を撫でくるる

わたししかあなたを包めぬかなしさが
  わたしを守りてくれぬ四十年かけて

たとへば君ガサッと

  落葉をすくふやうに


      私をさらって


       行ってはくれぬか  



病むまへの身体が欲しい雨あがりの
    土の匂ひしていた女のからだ








弥生 五選


君は雲 漂い流れ 消えゆかん
    我は虫けら 青空見上げ

いつかまた お逢い出来る日 楽しみに
        君の言葉は 我に酷なり

降る雪の 真白きにほい 清しさに
    君のかほりは 我まだ知らん

夏の日の 五本の指の スリッパに
     足入れパチリ 私可愛い?

いつの間に 花も萎れん シクラメン 

            眩しき薄紅 何処に消えん




2011年3月26日土曜日

夢十四夜「家族•函館」



優しさの父母(ちちはは)の愛に
  包まれし君嫁ぐ日を雛に尋ねん



お父さん私マリッジブルーなの
     何を夢見ん小さな寝息





夢に見し母と遊びし幼子は
   我らのことかと思い出巡り



幼き四人兄弟なり





小雨舞ふ春まだ浅き元町の
   見上げる臥牛霧に包まれ



小糠のやう雨に抱かれん帰へり道
    おぼろ月夜に我照らされて



あかつきに醒めて眺めむ東雲に
 如月十五日(ひ)うたげ終わらん



青空もさえずりもいずこ温かき
      朝の函館は灰色の街



風に飛び波頭砕けり北の海
    春待つ港 我が住む町





我が愛する家族......パチリ




夢十三夜「友を詠む」





ryu

春の陽の やうにやさしひ北の街 
   
   降る雪融けて龍、冬を飛ぶ




tetsu

日の出ころサクサクサクと雪道を
 
       吐く息真白に犬小走り



taaabeee

猫のやうのんびりゆるりまどろみん

      冬の窓辺に我急かせかと



hakodate

青空も真白き雪も春待ちぬ 

   冬至は遠く寒の小休み





tomoco

黒色の長き髪梳き振り返る 

    君は尋ねる 今宵は素敵?



sai

真夜中に 灯りを消し呟きぬ 
   
   君の素敵を 君への愛を




これほどに 愛してる君 美しく 

     戸惑い隠せぬ 瞳の輝き


sai&tomoco

冬空のあまりに高く青く澄む 

  清らかな今日 永久の契りを


yukka

花嫁と云うふた文字に恥じらいて 

  "てへっ"と呟く 君嫁ぐ日は



sai

青空に涙にに滲む春の陽の 

    君と歩まん永遠の道を



nawachou

君を愛で 二人過ごせし 幾年に

   今日の夕餉に 君は応えん