2011年4月12日火曜日


夢二十二夜「朝日歌壇 ホームレス歌人 公田耕一」



すい星の様に朝日歌壇に登場し、消えて行った歌人、公田耕一。その人の住所はホームレスと記されている。公田は感性に溢れた命の歌を詠い続けて来た。

まるで俵万智を思い出させる。心の揺れを素直に詠っているのである。自分の置かれている境遇を素直に表現しているのだ。

歌の表現の中には知性と教養を感じさせる。短歌の素養も豊かである。




公田耕一 詠みし歌


美しき星空の下眠りゆく


     
       グレコの唄を聴くは幻






柔らかい時計を持ちて炊き出しの




      カレーの列に二時間並ぶ







百均の「赤いきつね」と迷いつつ




     月曜だけ買う朝日新聞







日産をリストラになり流れ来たる 




      ブラジル人と隣りて眠る







雨降れば水槽の底にいる如く 



  図書館の地下でミステリー読む   





我が上は語らぬ汝の上訊かぬ

     梅の香に充つ夜の公園


ホームレス


  歌人の記事を他人事の


    やうに読めども涙零し





鍵持たぬ生活に慣れ年を越す



  今さら何を脱ぎ棄(す)てたのか







水葬に物語などあるならば



  われの最期は水葬で良し







パンのみで生きるにあらず配給の



    パンのみみにて一日生きる








親不孝通りと言へど親もなく



   親にもなれずただ立ち尽くす







ホームレス襲撃事件と派遣村



  並ぶ紙面に缶珈琲零(こぼ)す







一日を歩きて暮らすわが身には



  雨はしたたか無援にも降る







哀しきは寿町と言う地名 



    長者町さえ隣にはある







公田耕一氏へ一首捧げる


彗星の様にあらはれ消え行かん 




     公田耕一 師匠と仰ぐ 舟山






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