夢二十七夜「キミ 98歳」
家人の母、松浦キミは大正二年四月二十八日生まれ。今日、98歳の誕生日を迎える。車いすと介護ベットの生活であるが、娘の手厚い、戦いの介護に守られ今日を迎えた。
口癖は「わし、ほっぺツルツル。百まで生きるんだ」。痴呆もかなり進んで来ている。毎日が娘との戦いである。
介護の日々を詠んだ歌「夜に朝に歳老いし母介護する妻の戦い涙溢れん」で、NHKフォト短歌大賞を頂いた。
時折はっとする正常な会話の時もある。時折はまるで幼子になってしまう。赤子になろうと100歳までは生きてほしいと願っている。
母の記憶には若かりし頃の故郷の家のことばかりである
雪融けに窓の外見て一人言う
大根の種、わし蒔きに行く
ももとせに近き母は若き日の
田畑耕す事だけ語る
わし明日、家に帰ると母の言う
言葉に戸惑い妻涙ぐむ
お父さんお世話になって有難う、
今日休みならわしを送って
妻をおも区別つかずに娘呼ぶ
母のわがまま心いずこに
100歳の祝いを迎えん指折りて
700の日は赤子なりとも
100歳を迎える日まで.........