2011年7月16日土曜日

夢三十三夜「六月の函館」


彼岸が明けて夏至までの間、北国は最も素敵な季節の訪れである。
とにかく素敵なのだ。わくわくするのだ。
次から次と花が咲き、山肌はグレイの世界から若緑そして夏色に変わる。

寒い日、真夏の様な暑い日が交差する。
桜、ライラック、つつじが咲き乱れ甘い香りを放つ。

この季節は海霧の季節でもある。ミルク色のガスが街中を優しく包む。優しい六月の函館である。





海霧に夕陽は沈む

夕ふ暮れの 明日に消えて 寂しさを

     優しく包む 貴方が居(おり)て





六月は海霧の季節でもある



六月の花

リラ色の花の姿に立ち止まり

      そっと香は梅雨空の頃



世田谷の松葉通りのくちなしの

      花の香りを今思い出し



たった一夜の愛

おひさまに三人三様涙する

    父、母の愛、あなたの愛を




あじさいを愛でる貴方の優しさに

      雨音さえも素敵な六月




はまなすのたった一日(ひとひ)の

    命なれ、鮮やかな紅(あか)

            浜風に揺れ




紫陽花のひとつひとつの花びらに、

     旅の思い出そっと重ねて




夏近き 草の匂ひの むせかえる 

    雲に隠れし おぼろ月夜の



クチナシの香りがむせ返る

天つ風 雲の通い路 吹き抜けぬ 

    花の香りの 窓辺にとどき




タンポポの 綿毛のやうに我も行く 

   あなたのもとへ ひっそりそっと




くちなしの 香も今は 忘れなじ 

      六月の街は 夏色の空











朝霧に 樹々の緑も 溶け込みて 

  抹茶ミルクの やうに今日、明けて



海原.......

さざ波の 優しく揺れる 海原に 

    小舟のやうに 心も揺れて




いつの間に春から夏に変わりゆく

      雲の白さに心も揺れて




おはように、おはようと返る何気なく

        重ねし歳の三十幾年



再会 

白き手の君の思いで今ここに交わす

        二言三言ぎこちなく



父の日に

父の日に贈られしもの何もなく

     夕餉の会話、楽しき絆




ハグされてうふふと見つめる娘なれ

    モヒート二杯、君はしあわせ




昔のやう、おとぎ話を寝つくまで、

       語る娘は彼のことを














母、文子63歳




夏至の函館、三景三首




ベイエリア寂しく






暮れなずむ港

薄暮の臥牛山






北国に夏を迎へし今日、夏至に


   薄暮の海は漁り火揺れて







友集まりうふふ話は深夜まで

久かたの友の顔見し語らひぬ、

    心解きてのかく庄の美味さ




ときめきと偽りの心、呟きぬ

    今日の終りに何も忘れて




儚きはひと夜で消えし夢なれど

   また咲く日待つ浜茄子のやう




水無月の雨に菖蒲(あやめ)の紫の

    スクと清まして咲き誇らんと




函館の山を包みし海霧の優しき

       氷の微笑みのやう



The Water Is Wide

さざ波の遥かに続く海原を

  飛び渡らんと羽根なく侘しく





この愛をあなたの許へ届けんと

   消へ入りそうに小さな舟で




夜が明ける今日海原に漕ぎ行かん

    想ひを乗せて波間さまよふ



六月終わり歌

戯れに呟きを遊び昨日きょう、

    細き糸にはもう擦り切れん


素敵な六月は終わった.....








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